Hail, 2022 ©︎Namika Nakai Courtesy of TARO NASU

中井波花「浮かぶ」
2023年1月13日(金) - 2月10日(金)
火-土 11:00 – 19:00 
日・月・祝 休 

TARO NASU では 1月 13 日より中井波花個展「浮かぶ」を開催いたします。

中井波花 | Namika Nakai

1993年北海道生まれ。
2016年北海道教育大学卒業。
在学中に訪れたオーストラリアやデンマークでの体験に触発され、
2016年多治見市陶磁器意匠研究所入所、2019年修了。
2022年金沢卯辰山工芸工房を修了し、現在も金沢で制作を行う。

主な参加展覧会に2022年 「第5回金沢・世界工芸トリエンナーレ 工芸が想像するもの」、「第78回金沢市工芸展」、2021年「第9回菊池ビエンナーレ」、「笠間陶芸大賞展」、2020年「第54回 女流陶芸公募展」、「第76回金沢市工芸展」、2019年「第4回金沢・世界工芸トリエンナーレ」、2018年「高岡工芸クラフトコンペティション」がある。

手びねりで薄く伸ばされた土をリボン状に巻いて成型する独特の手法でしられる中井波花。現象としての陶芸の生成過程に興味があると語る中井波花の作品は破壊を通して新たな創造を試みるものであり、痕跡から可逆的に時間を表現しようとしているように見える。釉薬の融点が陶土にくらべて低いことを利用し、焼成の過程で溶けていく釉薬をも作品を構成する層の一つとして取り込むその作品は、まるで地層のように成型時の環境や過程を痕跡としてとどめながら形作られていく。地層が地球の生成のプロセスを物語るように、中井の作品もまたひとつのかたちの創造という時間を可視化した、いわば記憶としてのかたちなのである。今回、中井が新しく試みたのは釉薬の操作によって色彩を作品にとりこむことである。青や朱色の色彩もまた賦彩ではなく釉薬の化学変化によるもの。鉱物を思わせるその色彩は荒々しくも繊細な表情をたたえて、有機的な造形とあいまって凛とした美しい緊張を空間に作り出す。

いわゆる純粋芸術と工芸の境界線の曖昧さをひとつの特徴とする日本美術の流れのなかで、陶芸作品はつねに多面的な存在であり続けてきた。中井作品は陶芸作品がもつ本質的多面性を備えつつ、さらに従来の陶芸の枠にとらわれない造形を目指している。オーストラリアやデンマークで陶芸を学んだ彼女にとって、既存の伝統工芸への意識はどちらかといえば希薄なように思われる。彼女の作品は陶芸作品である前に彫刻作品であり、彫刻作品である前にアートであり、そしてそれは土と火が創造するパフォーマンスの記憶であり記録というべき存在である。
既成概念を軽やかに越えて、新しい造形を模索するその若い感性に、新世代日本の現代美術のパワーを感じてほしい。

『陶芸をはじめた頃、やきものの沢山の表情が面白かったのを覚えている。中でも窯から出てきた作品が熱で歪み、変化しているのを見て陶芸らしい、美しいと思った。それを生かして作品を作りたいと思った時に、釉薬と土の関係性について考えるようになる。釉薬は一般的には、色彩的な変化や質感的効果を目的として、また用途のある物には耐水効果を狙って使われるが、融点の異なる陶芸素材と再解釈し、造形に使うことで歪みやひび割れを引き起こすと考えた。この、「陶芸素材を再解釈する」という試みが、私の作品の前提にある。
今回はこれまでの制作を土台に新たに「金属」を再解釈し制作した。第一弾は「コバルト」。まるで金属に可塑性が与えられたかのように通常よりも多く金属が添加された土は、指跡、指紋を残しながら薄く積み上げられる。金属は色だけではなく土そのものの融点をかえ熱の影響を受ける。これまでの炭化焼成の黒や緋色とは異なり、不自然なまでに荒々しく発色する青は手に土に熱に有機的にかたちを与えられる。力強さと繊細さの共存のように、物質としての強固さとやきもの不確かさの共存が面白い。』  (中井波花、2022年)

会場構成:萬代基介建築設計事務所