"There was a discussion with Lucy Lippard in New York City (walking up the west side) in 1969" 1969
"Circle on the floor" 1968
"Circle on the wall" 1968
Photo by Kei Okano

6-7月のTARONASUでは、イアン・ウィルソン展を開催いたします。

イアン・ウィルソン| Ian Wilson
1940年南アフリカ生まれ。20歳でアメリカに渡り、アーティストとして活動を始める。ジョセフ・コスース、ローレンス・ウィナー、ロバート・バリー、アーティストグループ〈アート&ランゲージ〉らと並び、言語や概念を扱う作品で知られる。

1968年、ウィルソンはニューヨークにあるローレンス・ウィナーのアトリエで、抽象的な事柄について議論を行う作品”Discussions”を初めて行いました。ウィルソンは作品を非物質的に制作しようと考え、対話を通じて何かを生み出すという本作品を構想するに至ります。議論の様子は写真に収めることも録音することも許されず、議論の日時と場所、そして対話者のサインが記された作品証明書だけが残されます。この”Discussions”はドクメンタ7(1982)、ポンピドゥーセンター (1981,2005)、横浜トリエンナーレ(2014)、札幌国際芸術祭(2014)を始め、各国の美術展会場、アトリエや家などで継続的に行われています。

同じく1968年に、ウィルソンは指示書に従い壁や床に円を描く”Circle on the floor” “Circle on the wall”を発表します。彼は言語によって組み立てられた指示と、描かれた円の関係に焦点を当てこの作品を制作しました。

コンセプチュアルアーティストたちにとって、非物質的な作品をいかに制作し、保存し残すのかといった事柄は無視することのできない課題としてあり続けています。こうした課題に取り組もうとした最初期の一人であるウィルソンは、議論を芸術形式のように扱い、今日まで世界各地で創造的な対話を続けてきました。 本展ではアーティストらや観客と行ってきた議論の作品証明書が並び、これまでの”Discussions”を一望に回顧いたします。また、”Circle on the floor””Circle on the wall”の指示書が展示され、実際に床と壁に円が描かれます。この展覧会を通して、確かに生み出されたウィルソンと対話者による議論の数々に思いを馳せていただければ幸いです。