"LEFT IN A CLEFT OF A TREE" 2008
"BLOCKS OF COMPRESSED GRAPHITE / SET IN SUCH A MANNER / AS TO INTERFERE / WITH THE
FLOW OF NEUTRONS / FROM PLACE TO PLACE" 2017
Photo by Kei Okano

このたび 1-2月のTARONASUでは、タイポグラフィによる作品制作で知られているローレンス・ウィナー「WATER & SOME OF ITS FORMS」を開催いたします。

ローレンス・ウィナー| Lawrence Weiner
1942年、ニューヨーク生まれ。ニューヨークを拠点に制作活動。
近年の主な個展として、2014 年「Some Moved Pictures of Lawrence Weiner」 (グラスゴー現代美術館、イギリス)、2007年「As Far as The Eye Can See USA」(ホイットニー美術館)。2012年ドクメンタ(ドイツ)、2007年シャルジャ・ビエンナーレ(アラブ首長国連邦)に参加するなど国際的に活躍している。

ローレンス・ウィナーは60年代から一貫して、自身の芸術を「インフォメーション」と称し、言語や記号、それらが喚起する想像力に関心を寄せてきました。ウィナーにとって作品とは鑑賞者に伝達され、心象となることで初めて成立するものです。鑑賞者は物事に対してそれぞれ異なる経験を有し、それぞれに異なった心象を描きますが、そのどれもがウィナーにとって肯定しうるものです。

「水とその形態のいくつか」と題された本展で発表される新作は、水、塩水、淡水、中性子、黒鉛といった単語と、それらを関係付ける文や記号、図形などによって成り立っています。水、塩水、淡水は物質的な対象ですが、それらは機能、性質、状態などを示す言語の働きによって分類されているものです。また文や記号、図形によって作られる関係は、現実では起こりえない捻れた関係を作りだしています。ウィナーにとって自身の作品とは、論理や時間、空間に対する鑑賞者の認識への働きかけなのです。

また本展では、英文と共に日本語が使用されています。ウィナーが用意した英語のテキストに対して画廊側が複数の日本語訳を用意し、翻訳のニュアンスに踏み込んだディスカッションの結果、ウィナーが日本語訳を選択するというやり方で作品が完成しました。言葉と文字が容器となって運ぶ意味や心象の、翻訳しようとしてもしきれない何かこそが、文化の本質であるというウィナーの確信が、こうした制作を生んだといえるでしょう。「インフォメーション」としてアートにこだわり続けるウィナーの最新作をぜひご覧ください。