Photo by Keizo Kioku

7-8月のTARO NASUは、万代洋輔展を開催いたします。

TARO NASUでは初の個展開催となる万代洋輔。 本展覧会では、新作を含む写真・写真オブジェ・映像作品を展示いたします。

万代洋輔 | Yosuke Bandai
1980年 東京生まれ、東京にて制作活動。
主な個展に2012年「病める万代、無類無敵の情熱」AI KOWADA GALLEY、2009年「RADICON」ヒロミヨシイ、グループ展に2014年「I’m hungry」STEAK HOUSE DOSKOI In the kitchen of XYZcollective、2011年「A Midsummer Nights Dream」ヒロミヨシイ、2009年「SECRET PHANTPM II」トーキョーワンダーサイト など。

不法投棄された廃棄物で彫刻を制作しそれを写真に収めた『蓋の穴』シリーズや、自宅周辺をスキャナーによって撮影したシリーズなど、万代洋輔は写真という媒体のその物質性と概念を独自のアプローチによって考察してきた。

グローバル化が加速するに伴い、文化・民族・宗教そして国家などの境界線が揺らぎ、わたしたちは自らのアイデンティティの拠り所となるべき「神話」を喪失した。今日においては、自分は何者なのか?という問いに自ら答えることは一層困難になりつつある。

こうした中にあって、万代の制作活動は自らの拠り所となる自分だけの「神話」を創出しようとしているようにみえる。例えば『蓋の穴』シリーズにおいて制作される立体作品は、この「神話」における一種の宗教彫刻あるいは祭壇として機能していると考えられる。万代自身はこの制作手法を「供犠的な情念を顕在化させる」ためのアプローチだと話すが、廃棄物からなる彫刻はアイデンティティの発見という現代的救済を求めて自らの神に祈りを捧げるための祭壇ともなり得る存在である。この文脈においては、その制作行為もまた一種の宗教儀式として捉えることができるだろう。既存のイメージとテキストから構成される近年の作品シリーズもまた、断片化された記億からひとつの文脈を生み出すという神話性を模索するものだと言える。

本展覧会は、『蓋の穴』シリーズを軸に、現在に至るまでの思索の変遷をたどるものだと万代は言う。タイトルにある“あばら骨”は、旧約聖書の創世記に記されている「アダムのあばら骨からイブが創られた」という物語にインスピレーションを受けた。個人的「神話」の創造という上記の文脈からすれば、 “俺”と表される現代人が、アダムの身体から切り取られたあばら骨、つまりは自身から生まれでたものにしか拠り所を見いだせないことを認識する様であると読み取れよう。

万代は一貫して写真を主軸とする表現を続けてきた。その背景には、写真という媒体を介することでその被写体の存在により確からしさが付与されるという写真の特性があると考えられる。万代にとっては、写真に撮るということはその存在の確かさを証明する行為であり、ひいては「神話」という空想にリアリティを与える行為に他ならないからだ。