TARO NASUでは8月29日より、アン・トゥルイットの個展を開催いたします。
トゥルイットは1921年、ボルチモアに生まれる。1943年、ブリンモア大学で心理学学位を取得後、第二次世界大戦中は看護助手として働きながら、詩や短編小説の執筆を行った。結婚を機にワシントンDCに移住、執筆と翻訳活動を行うが、1949年から1年間、ワシントンDCのInstitute of Contemporary Artで彫刻を学んだことをきっかけに、ヴィジュアルアートの世界での活動を始めた。初期の作品には具象的な彫刻が多く、粘土やセメント、石膏や鉄といった多様な素材と技法を用いての制作に彼女の模索の痕跡がみられる。60年代以降は、のちに彼女の代表的なスタイルとしてしられる木を素材とする幾何学的な彫刻に取り組むようになった。そこにはアド・ラインハートやバーネット・ニューマンらの作品の影響や作家間の交流から受けた刺激があったという。「Black, White and Grey」(Wasworth Atheneum、1964年)や「Primary Structures」(The Jewish Museum、1966年)といった歴史的なグループ展にも参加していることからも明らかなように、彼女の作品は存命中から高い評価を受け、美術史において強い存在感を放っている。
制作活動と並行して執筆活動も継続的に行った。制作背景や自らの芸術観を綴った著作は、現在5冊の書物『Daybook』(パンテオン、1982年)、『Turn』(バイキング、1986年)、『Prospect』(スクリブナー、1996年)、『Yield』(イェール大学出版、2022年)、『Always Reaching』(イェール大学出版、2023年)として刊行され、高い評価を得ている。
今回の展覧会では、「Arundel」シリーズとして知られる白のペインティング3点および彫刻1点にドローイングを加えた構成の展となる。ペインティングも彫刻も自ら着彩して完成させるトゥルイットの作品は、ミニマリズムの歴史の中でも独特の輝きを放っている。形と色との緊張関係のなかに私的な経験や記憶を託し、抑制的でありながらきわめて豊かな情感を表現したその作品は、アーティストであり教師であり、妻であり娘であり母であるという一人の人間の、ときに揺れながら、それでも揺るぎない何かを求める探究の旅の軌跡ともいえよう。
アン・トゥルイット|Anne Truitt
1921年アメリカ合衆国、メリーランド州生まれ。2004年没。
主な展覧会に、2017-2018年「In the Tower: Anne Truitt」(National Gallery of Art、Washington, D.C、アメリカ合衆国)、2016年「Anne Truitt: Intersections」(Baltimore Museum of Art、Maryland、アメリカ合衆国)、2015年「Anne Truitt in Japan」(Matthew Marks Gallery、New York、アメリカ合衆国)、2011年「Anne Truitt: Works from the Estate」(Stephen Friedman Gallery、London、イギリス)、1973-74年「Anne Truitt: Sculpture and Drawings, 1961-1973」(Whitney Museum of American Art、New York、アメリカ合衆国)、1966年「Primary Structures」(The Jewish Museum、New York、アメリカ合衆国)、1967年・1964年Truitt(南画廊、東京)、1963年「Truitt First Solo Exhibition」(André Emmerich Gallery、New York、アメリカ合衆国)など。また、2017年、Dia Art Foundationは彼女の彫刻および絵画作品の大規模な収蔵を発表し、それらの収蔵作品を2021年末までニューヨークのDid Beaconにて長期間展示した。2026年には、スペイン・マドリードのレイナ・ソフィア美術館で大規模な回顧展が開催予定となっている。