(c)Simon Fujiwara, Courtesy of TARO NASU

サイモン・フジワラ「Who is the Muse?」
2026年1月10日(土)-2月14日(土)
火-土 11:00-19:00 
日月祝 休

TARO NASUでは2026年1月10日より、サイモン・フジワラの個展「Who is the Muse?」を開催いたします。

 

本展は、フジワラにとって6年半ぶりとなる弊画廊での個展である。フジワラが2020年より展開してきた「Who the Bær」シリーズは、コロナ禍の中で「超資本主義的なエンターテインメント文化によって、ますますナンセンスになっていく世界に対する、率直なダダ的反応」として始まり、その後深化を遂げてきた。このシリーズでは、「Who」という、人格もジェンダーもアイデンティティも定まらない熊のキャラクターが、架空の世界「Whoniverse」を巡りながら「自分とは何か」を探し続ける。

今回の展覧会では、ピカソやベラスケス、フラゴナール、モディリアーニらの巨匠が描いた「ミューズ」を、フジワラが現代的な視点で再解釈した新作ペインティング13点を一堂に公開する。

ミューズとなった「Who」は、時に原作とのたわむれや争いを繰り広げ、時にキャンヴァスから脱出を試みる。疲れ果て興ざめもし、さらにのぞきこんだカガミにうつった自分のモンスター化した姿をみてパニックや不安におそわれたりもする。

フジワラはここで単に描く主体と描かれる客体の権力構造を暴くだけではない。主体であると同時に客体でもある「Who」を通して、造物主への抗いを示しながら、「自分とは何か」という問いかたそのものの可能性を問う。

SNSの普及により、われわれはこれまで出会うことのなかった他者とつながった。ダイバーシティや個々の違いへの理解が進み、属性による先入観からの解放を目指しているように見える。しかしその一方で、イメージへの過剰な執着やテクノロジー、ソーシャルメディアは人間に複雑な影響を及ぼし、反動としてむしろ混沌、嫌悪、フェイクリアリティがはこびるようになった。前近代よりも「自分らしさ」を表現できるはずにもかかわらず、雑多な情報にとらわれ、不安のなかで、所属できる集団を求めて新たな規範に適応しようとし、「自分探し」に迷い込む。

数多のミューズを描いたピカソは、「私は捜し求めない、見出すのだ」という言葉を残した。だが情報の渦に呑み込まれそうな現代社会では、無数の「答え」が目の前へ押し寄せ、まるで捜し求めよといわんばかりだ。われわれは果たして何を見出すことができるのか、その答えもまたどれほど真実なのか──フジワラは「Who」の姿を介して、現代におけるアイデンティティを織りなす背景や要因の重層性、なおかつアイデンティティそのものの確かさを問い直している。

 

サイモン・フジワラ

1982年、イギリス生まれ。現在ベルリンを拠点に制作活動。

2010年、アートバーゼルにてバロワーズ賞、フリーズアートフェアにてカルティエ賞受賞。

近年の主な個展に、2025年「Who’s Iconic? Paintings, Drawings and Maquettes From the Whoseum of Who the Baer」(G2 Kunsthalle、ライプツィヒ)、2024年「Dreams of an Owl, Who the Bær and the Wounded Planet」(ビーレフェルト美術館)、「Simon Fujiwara: It’s a Small World」(Kiasma、ヘルシンキ)、2021-22年「Who the Bær」(プラダ財団、ミラノ;プラダ青山、東京)、2016年「ホワイトデー」(東京オペラシティアートギャラリー)、2013年「The Problem of the Rock」(太宰府天満宮、福岡)、「Grand Tour」(ブランシュヴァイク美術館)、2012年「Simon Fujiwara : Since 1982」(テート美術館セントアイブス)など。

ほかに、2023年第6回ダッカ・アート・サミット、2019年第16回イスタンブール・ビエンナーレ、2016年第9回ベルリン・ビエンナーレ、2013年 第2回シャルジャ・ビエンナーレ、2012年第9回上海ビエンナーレ、第9回光州ビエンナーレ、2009年第53回ヴェニス・ビエンナーレに参加するなど国際展への参加も多数。