4月−5月のTARO NASUではMark Leckey(1964-)とAlessandro Raho(1971-)による2人展「After the Spell 魔法が解けたあと」を開催いたします。
ともにイギリスを拠点に活動しているLeckeyとRaho。ふたりはそれぞれ、一見するとまったく異なる制作姿勢でそのキャリアを築いてきた。60年代生まれのLeckeyは、80年代末のイギリスで注目を浴び、その後、大衆文化や消費行動等の現象を主題としながら、テクノロジーを駆使した映像作品やコラージュ、さらにパフォーマンスにも力を注いできた。他方、70年代生まれのRahoは、そのキャリアの初期から一貫して、肖像、静物、風景という古典的な絵画の枠組みでの独自の表現を模索し、ペインティングというジャンルにいまなお残されている可能性の豊かさを提示することに集中してきた。対照的ともいえるこの二人が、個人的な親交のなかで互いの制作への理解と共感を深め、近年その交流を2人展という形式で実体化させるまでにいたった。今回のTARO NASUでの展覧会もまた、イギリスで試みられた二人展の最新の展開として位置付けることができるだろう。
Leckeyの今回の展示作品は、人間の欲望を原動力として巨大化していく都市の華やかな幻惑と、その裏に潜む暗部をも示唆するインスタレーションである。彫刻と映像で構成される展示では、中世の城を思わせる立体が、人間の意思や欲望をたたえる器として立ち現れる。多彩な光に彩られた映像作品はその彫刻作品に躍動感と輝きを与え、文明という「幻想」が発する強力な輝きを発し、鑑賞者を幻惑する。
今回の二人展は、作品を通しての2人のアーティストの対話である。人間の根源的な欲望と人間そのものに対する眼差しを共有しながら、彼らは、自らが作り出した文明のなかで揺れる人間存在を問いかける。欲望をパートナーとして踊り続ける自分と、それをみつめるもう1人の自分。鑑賞者が展覧会をとおして見出すものは、文明という「魔法が解けたあと」の光景なのだろうか。
アレッサンドロ・ラホ| Alessandro Raho
1971年、バハマ国・ナッシー生まれ。現在はロンドンにて制作活動。
主な展覧会に2024年「Selected Works」(Elliott Templeton Fine Arts 、ニューヨーク)、2023年「In the Offing」(Turner Contemporary、ロンドン)、2014年「I Cheer a Dead Man’s Sweetheart」(De La Warr Pavilion、ベクスヒル・オン・シー)、2013年「Knock Knock: Seven Artists in Hastings」(Jerwood Gallery、ヘイスティングス)、2007年「Great Britons」(National Portrait Gallery, Smithsonian Institution、ワシントンD.C.)、2001年「Unseen Landscapes」(The Lowry、サルフォード、ヨーク市立美術館ほか巡回)、1998年「Surfacing」(Institute of Contemporary Arts 、ロンドン)、1995年「Brilliant! New Art from London」(Walker Art Center、ミネアポリス)など。2004年、National Portrait Gallery (ロンドン)の委嘱により制作された「Dame Judi Dench」をはじめ、The Museum of Modern Art (ニューヨーク)、Seattle Art Museum(シアトル)、Berardo Collection(ポルトガル)、Tate Collection(ロンドン) 他、パブリックコレクションも多数。
マーク・レッキー | Mark Leckey
1964年、イギリス・バーケンヘッド生まれ。現在はロンドンにて制作活動。
主な個展に、2025-26年「in situ: Mark Leckey. And the City Stood in its Brightness」(Guggenheim Museum Bilbao、ビルバオ)、2019年「O’Magic Power of Bleakness」(Tate Britain、ロンドン)、2017年「He Thrusts his Fists against the Posts but Still Insists he Sees the Ghosts」(National Gallery of Denmark、コペンハーゲン)、2016年「Containers and Their Drivers」(MoMA PS1、ニューヨーク)、2013年「On Pleasure Bent」(Hayward Gallery、ロンドン;Hammer Museum、ロサンゼルス)、2008年「Cinema-in-the-Round」(Solomon R. Guggenheim Museum、ニューヨーク)など。The Museum of Modern Art (ニューヨーク)、Tate Collection(ロンドン)、Los Angeles County Museum of Art (ロサンゼルス)、Centre Pompidou (パリ)、 Fondation Louis Vuitton(パリ) 他、パブリックコレクションも多数。
