"A Single, Hairy, Horny, Hanging, Spanish Bullock" 2010
"Imperial Nights" 2013
"Imperial Tastes III - Dessert" 2013
"Imperial Tastes I - Starter" 2013
"Imperial Tastes II - Main" 2013
"Dawn on the Imperial Suite" 2013
"Imperial Tastes, Fragment I" 2013
"Imperial Tastes, Fragment II" 2013
"Imperial Bar" 2013
"Gifts Returned" 2013
"Art Worlds : Mex in the City" 2012

Photo by Keizo Kioku

3月、4月のTARO NASUは、サイモン・フジワラの個展を開催いたします。

サイモン・フジワラ Simon Fujiwara
1982年 ロンドン生まれ。
日本人の父とイギリス人の母を持つ。演劇性の高いパフォーマンスやインスタレーション、彫刻、ビデオそしてテキストといった多様なメディアによって創出されるフジワラの作品は国内外で高い評価を得ている。

サイモン・フジワラは自分自身や家族、あるいは他人の個人史に架空の物語を挿入し、新たな物語を紡ぐことで自らの作品とする。
しばしば現実がたたえる真実は、虚構がたたえる真実よりも「真実味に欠ける」という認識があるからこそ、フジワラは現代のおとぎ話を作り出し、自ら語ってみせる。おとぎ話とは壮大なほら話であり、その大げさな身振りゆえに、真実の構造を現実以上により明確に伝える事ができるからである。
フジワラにとって「現実」とは必ずしもその「真実」を写すものではない。ドラマチックなパフォーマンスや大げさな表現を交え、あえて虚構という枠組みを使うことによって生み出されるフィクションの中にこそ、フジワラが求める「真実」がある。彼の「真実」は現実そのものではないが、現実の本質のなにがしかをより濃縮して表現しているという点では、現実を反映した「真実」なのだ。

本展「Aphrodisiac Foundations」は、フジワラの母が移り住んだ様々な都市を題材とし、フジワラの記憶や、母の過去が喚起する想像に基づいて、架空の都市の構築を図るプロジェクトシリーズ「King Kong Komplex」の第二弾。
ここでは、サイモン・フジワラの両親の出会いの場となった、フランク・ロイド・ライト設計による旧帝国ホテル東京を題材に、建築物と都市、エロティシズムの関係性に光をあてる新作のインスタレーションを展示する。

  古代マヤ文明における建築様式を取り入れてロイド・ライトが設計した帝国ホテル東京は、1923年の関東大震災によってダメージを受け、両親が出会った翌年の1969年に解体された。本展の一部を構成するのは、破壊された建築物の一部を再現したオブジェ。それはフジワラの両親の愛の始まりであり、震動と損壊はまた、愛やエロティシズム、そして同時に二人の間の脆い関係性を指し示すメタファーであり、出会いの時点で内包されていた破滅の予兆でもある。作品に注意深く埋め込まれた幾重にも重なる「意味」のレイヤーは、私たちをフジワラの語る「物語」へといざなう装置の役割を果たす。

そして個人の物語が都市や歴史的建築物が内包する公の記憶と重なり合い、虚構という枠組み通してその姿を変えるとき、フジワラが生み出す新たなストーリーは「現実」と背中合わせに存在する「真実」のすがたのひとつとして、我々の前に現れるのである。