"Cultured Pearl" 2015/11/23-2016/01/10
"Pearl Hunting (Sunray Venus)" 2016
"Pearl Hunting (Imperial Venus)" 2016
"Pearl Hunting (Slipper wing)" 2016

Photo by Keizo Kioku

1-2月のTARO NASUは、サイモン・フジワラの個展を開催いたします。
サイモン・フジワラ| Simon Fujiwara
1982年、イギリス生まれ。 現在ベルリンを拠点に制作活動。
日本人の父とイギリス人の母を持つ。演劇性の高いパフォーマンスやインスタレーション、彫刻、ビデオそしてテキストといった多様なメディアによって創出されるフジワラの作品は国内外で高い評価を得ている。
2010年 Frieze Art Fairにて カルティエ賞受賞。
主な展覧会に 2015年「Storylines: Contemporary Art at the Guggenheim」(グッゲンハイム美術館、ニューヨーク)、2015年「History is Now: 7 artists take on Britain」(ヘイワードギャラリー、イギリス)、2014年「Un Nouveau Festival」(ポンピドゥー・センター、パリ)、2013年「Grand Tour」(ブランシュヴァイク美術館、ドイツ)、「The Problem of the Rock」(太宰府天満宮、福岡)、2012年「Simon Fujiwara : Since 1982」(テート美術館セントアイブス、イギリス)ほか、2015年PARASOPHIA 京都国際芸術祭、2013年 第2回シャルジャ・ビエンナーレ、2012年第9回上海ビエンナーレ、2009年第53回ヴェニス・ビエンナーレに参加するなど国際展への参加も多数。

本展覧会「Pearl Diving」は、養殖真珠をテーマとした立体作品を中心に構成されます。

ミキモトの創業者、御木本幸吉はかつて「世界中の女性の首を真珠でしめてご覧にいれます」と話したと言います。その御木本によって確立された養殖真珠の生産過程とは、生きたアコヤ貝の中に貝殻やガラス片等の粒を埋め込み、異物に対する貝の自己防衛を利用してその周りに真珠層を形成させるというものでした。

貝にとっては苦痛を伴うであろう真珠の養殖過程と御木本の言葉には、「女性を美しく飾りたい」という愛と同時に、大いなるエゴと暴力的な資本主義、そして男女間の支配被支配の関係がうかがい知れます。 真珠の宝石言葉は「純潔」と「円満」。今日では婚約の贈り物として人気となったミキモトのパールネックレスですが、それは女性にとっては婚姻制度に繋がれた”奴隷”に、その象徴として与えられた美しい首枷であったのかもしれません。

今回フジワラは自らの体を用いて、養殖真珠の生成の過程を“遡る”ことを試みました。
苦痛を伴いながら長い年月をかけて得られた”完成された調和”としての真珠、それを意図的に破壊することは、美の陰にひそめられた”愛”と”暴力”の本質を明るみにさらす行為であると考えられます。

フジワラはこれまでも、公の歴史の中に偽りの自分史という”異物“を入れ込むことで個人と社会の関係についての考察を行ってきました。同じく異物を挿入することから生まれる養殖真珠を通じて異文化の衝突や異物としての他者に言及する本展覧会は、フジワラ自身の日本人の父と英国人の母の結婚についての物語でもあります。
暴力と愛とエロスに彩られた二つの物語がフジワラを通して結実する、その特徴的な語り口で紡ぎ出される新たな物語をぜひご覧ください。