"Universal Trial” 2013
”Present" 2013
"Behind” 2013
”Poem for example"

Photo by Keizo Kioku

5月、6月のTARO NASUは、吉村熊象の個展を開催いたします。

吉村熊象

1978年大阪府生まれ。
2002年千葉大学工学部卒業。
2010年京都市立芸術大学美術研究科絵画専攻修了。
2010年、個展「10 Days Selectionー予兆のかたち11」(INAXギャラリー2、東京)
現在、奈良県にて制作活動中。

TARO NASUでの初個展となる今回は、「日の丸」をモチーフにした平面および映像作品を軸に新作を発表いたします。

吉村熊象は、曖昧さ、微妙さ、「間(ま)」など、意識的な「ズレ」をもたらす感覚や、ありふれた日常の出来事の中にひそむ無意識を視覚化することで、ひとの認識の不確実性を提示します。

デザインを学んだ千葉大学時代、当時求められていた「普遍的デザイン」の在り方に疑問を抱くようになった吉村は、日本人にとって最も「普遍的」で最もなじみ深いイメージである「日の丸」を、主要テーマとしてとりあげるようになります。
「国家の象徴」、「国民のアイデンティティの拠り所」(内閣府HP掲載、内閣総理大臣の談話(平成11年8月9日)より)とされ、ゆるぎないイデオロギーに帰依するイメージであるはずの日章旗をあえて作品に取り入れることで、吉村はイメージとそのイメージが依る概念の不確かさを表現してきました。

「私にとって芸術とはある使命を持っています。その使命とは態度を表わすことです。その態度を表わすために必要なことがあります。それは何かを選択的に決断することではなくて、自分の中の無意識から現れる感情や鈍感になってしまった感覚に自らの力で気付くことです。我々の無意識から様々な感情を引き起こす日の丸は最たるイメージのひとつです。彼は個々の感情を前にただ存在し続けています。その日の丸の態度、振る舞いは芸術もしくは芸術家としてあるべき姿のひとつではないのかと感じています。つまり日の丸は私にとって避けて通れない課題なのです。私がモチーフに選ぶものはそういった態度のものたちです。態度を表わすことは新しい自分に出会うことでもあります。そう、新しい自分に再び出会うために。」

                          2013年5月 吉村熊象

吉村が生み出すウィットに富んだ作品は、ユーモラスでありながら機転にあふれた辛辣さを持ち、見る者の感覚を刺激します。既成概念という覆いを取り外し、無意識のなかに潜む人の深層心理を明るみに出す事によって、「真実」の姿を垣間みる機会をわたしたちに与えてくれるのです。