Photo by Kei Okano

TARONASUでは11月24日より、松江作品の代表的シリーズである「gazetteer」シリーズをとりあげます。

モノクロの風景写真としてしられる「gazetteer」ですが、松江は本シリーズを制作開始した当時からすでにカラーフィルムでの撮影も同時に行っていました。同じ被写体をモノクロ、カラーの両方の手法で撮影しながら、モノクロのみを現像し発表した理由として松江は、当時のカラー写真は自分が望むクオリティを実現できなかったから、と語っています。写真はテクノロジーであり情報であると公言し続けてきた松江にとって、カラー写真をめぐる技術的進化は表現領域の拡大と同義でした。2005年に初のカラー作品および作品集「JP-22」を発表、現在では制作の比重はカラー写真のほうがより多く占めるといいます。

今回、TARONASUの個展では、「gazetteer」シリーズから、同じ被写体を撮影したモノクロとカラー両方の風景作品を展示します。同時期に撮影されたものもあれば、数年後に再度、同じ撮影地、同じ被写体で撮影された組み合わせもあるという多彩なラインアップは、時間の要素をもとりこみながら、モノクロとカラーのイメージの往還を可視化する遊び心にあふれた構成です。
「見る技術」としての写真にこだわり続ける松江泰治の本展は、2018年12月8日から広島市現代美術館にて開催される個展「松江泰治 地名事典|gazetteer」に先立ってオープンします。また広島ではGALLERY-SIGN Hiroshimaにおいても同12月8日から「松江泰治 JP-34」展がスタート予定です。ほぼ40年にわたる松江の軌跡をこの機会にぜひあわせてご覧ください。

 

松江泰治| Taiji Matsue
1963年東京生まれ。現在、東京にて制作活動。
1987年東京大学理学部地理学科卒業。
1996年第12回東川賞新人作家賞受賞。2002年第27回木村伊兵衛写真賞受賞。2012年第28回東川賞国内作家賞受賞。2013年第25回「写真の会」受賞。
 
2006年「JP-22」(ヴァンジ彫刻庭園美術館、静岡)、2011年「アーティスト・ファイル2011―現代の作家たち」(国立新美術館、東京)、2012年「世界・表層・時間」(IZU PHOTO MUSEUM 、静岡)、2014年「青森EARTH」(青森県立美術館、青森)、札幌国際芸術祭(北海道)、巡回展「Logical Emotion」(ハウス・コンストルクティヴ美術館、スイス/クラクフ現代美術館、ポーランド/ザクセンアンハルト州立美術館、ドイツ)、2015年「俯瞰の世界図」(広島市現代美術館、広島)、2018年「ウェザーレポート」(栃木県立美術館、栃木)、巡回展「めがねと旅する美術展」(青森県立美術館/島根県立石見美術館/静岡県立美術館)など国内外の個展、グループ展、芸術祭等に多数参加。また、2018年12月より、広島市現代美術館にて個展「松江泰治 地名事典|gazetteer」を開催。

東京国立近代美術館(東京)、国立国際美術館(大阪)、サンフランシスコ近代美術館(アメリカ)など国内外多数の美術館に作品収蔵。